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“女郎蜘蛛の腹のなか”真ん中の階。 浴場があるためひとの出入りが一番多い階。 鬼 名前 職業 性別 制限等 葵(あおい) 扇子職人 女 --- 青藤(あおふじ) 古本屋 男 同性愛不可 隠形(おんぎょう) 小料理屋 男 --- 影縫 綴(かげぬい つづり) 甘味処 初音 女 同性愛不可 樟弥(くすみ) なし 男 --- 砕五(くだい) 大工 男 同性愛不可 瀬藤(せとう) お手伝い 男 --- 梵太(ぼんた) NEONEET 男 --- 三葉(みつば) 花屋 男 --- 夜桜(よざくら) 隠居中 男 --- 流(りゅう) 賭博師 男 --- 竜胆(りんどう) 駕籠屋 男 同性愛不可 人 名前 出身年代 性別 制限等 以前の職業等 赤羽 蝶子(あかばね ちょうこ) 現代 女 --- アナイ 1970年代 女 --- 一番 影紗(いつがい えいしゃ) 2011年 女 --- 四条 晴哉(しじょう はるや) 現代 男 --- 瀬能 龍子(せのう りょうこ) 明治後期 女 --- 草哉(そうや) 90年代 男 異性愛不可 戸川 五日(とがわ いつか) 現代 男 --- ます 1903年 女 --- 御崎 一佐(みさき かずさ) 現代 男 --- 流斗(りゅうと) 現代 男 --- 麟堂 冬梧(りんどう とうご) 明治 男 ---
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投稿されたSSのまとめです。 【はっきり①】 女「男、ちょっち来い」 男「あ?」 男「なんだよ」 女「あのな、聞きたいことがある」 男「だからなんだって」 女「私は男のなんだ?」 男「……」 女「言え」 男「……彼女」 女「うん。男は私の彼氏だ」 男「そうだな……なんだよ?」 女「あのな」 男「おう」 女「キスするぞ」 男「……え!?」 【はっきり②】 男「な、お前……」 女「思えばな……私はお前の彼女らしいことをなんもしてない」 男「…」 女「いつも男にカバーされっぱなしで、それに満足していた」 男「まあ、俺の役目っつーか……」 女「……恩返しだ」 男「…」 女「私はバカだからな。こういうときどうすればいいか知らない……任せていいか?」 男「……ったく……お前はいつもいきなりだな」 女「…」 男「……一つだけ言っとこう」 女「なんだ?」 男「女はバカなんかじゃない」 女「え?」 ちゅっ… 男「……だめなだけだ。ちょっと頭が弱いだけ……そこ以外は愛してるからな?」 女「……うん……こちらこそ……」 ちゅっ… 「すまない、あそこはなんて書いてるんだ?」 男「ほら、ノート見せてやっから・・・」 女「助かる」 男「お前、コンタクトにしたんじゃなかった?」 女「うむ、さすがに10日間使用は厳しいようだ・・・」 男「ん?」 女「本来は1日使い捨てなんだ」 女「どうぞ、汚い部屋だが」 男「おうっ!夏なのにこたつ!つけっぱなしのPC!異様に長い電気の紐!エトセトラエトセトラ・・・」 【電気】 男「なあ」 女「なんだ」 男「お前の家の電気を停めたらどうする」 女「そんなことをしてみろ……絶対に男を許さんぞ……」 男「ちょっ、おま、恐っ」 女「そうか・・・そろそろあの時間か・・・」 男「どうした?」 女「男、コンビニへ行こう」 男「お、おいどうしたって!」 女「よし、そろそろだ・・・きた!」 男「おい、俺には何がなんだか・・・」 女「私の調査によるとこのコンビニでは、この時間帯に廃棄の弁当を捨・・・」 男「よし、俺のおごりでラーメン食いにいっか!」 【ベッドサイドテーブルにノーパソ天井の電気はリモコン式だが面倒なので手元の電気スタンド部屋の残りの部分は全部本棚】 男「女の部屋はそういうイメージがある」 女「ひとつひとつ説明しよう」 女「まずベッド。そんなもん置いていない。それを置いたら 床に何も置けなくなる。だからハンモックだ」 男「南国か」 女「あと電気。動いている物体がなければ、10分で消える自動ライトにしている。 おかげで10分おきに動かんと電気消えるのが難点だな」 男「すごいなお前」 女「で、本棚だがな」 男「それもすごいのか」 女「そんなものない。本なんか読むのすら面倒だ。あったとしても床に放置 本棚に入れることすらめんどくさいわ」 男「たくましいな……ある意味惚れ直したよ……」 女「・・・あのな・・」 男「ん?」 女「・・人間は生きながらにして腐るんだ・・」 男「?どしたの?」 女「・・・昨日な、おへその下にカビが生えたんだ・・」 男「!?・・・」 女「・・・」 男「・・・」 女「・・おっ、俺は人間をやめるゾー・・・」 男「・・・ちゃんと毎日風呂入れよ」 女「うん。ごめん。」 【最強の回復の剣盾】 女「めっさほしい」 男「いつ使うんだよ」 【すもち】 女「男、男」 男「なに」 女「すもーくちーずはあるかい?」 男「え?あるけど」 女「くれ」 男「えー……」 女「いいから」 男「しかたねーな、ほれ」 女「もくもく……」 男「旨いか?」 女「にょろーん」 男「??」 【されど】 男「あー、ほらもうお菓子のついた手でゲームして」 女「ムギュムギュ」 男「ほらこぼれてるこぼれてる。お前なー、もうちょっとちゃんとしろっていいうかクドクド……」 女「……」 男「ん? なんだ、言いたいことでもあるのか?」 女「あーい、とぅいまってぇーん」 男「……」 滅茶苦茶怒られました 【甘甘】 女「男」 男「なんだよ」 女「甘えてみてもいいだろうか」 男「よし、病院だな」 女「違う違う。あのな、やっぱ恋人なんだからそういうのも必要かと」 男「……いまいちよくわからん」 女「こうだ。むしゃむしゃ……」 男「……口の周りべたべただな」 女「うん。拭いてくれ」 男「それが甘えるってやつか」 女「みたいだな」 男「絶対違うと思うけどな……」 女「はーやーく。もう袖で拭きたくなってきた」 男「ちょっ、わかったわかった……」 ふきふき… 勝手に改変してみた 160スマン 【はっきり② Part2】 男「な、お前……」 女「思えばな……私はお前の彼女らしいことをなんもしてない」 男「…」 女「いつも男にカバーされっぱなしで、それに満足していた」 男「まあ、俺の役目っつーか……」 女「……恩返しだ」 男「…」 女「私はバカだからな。こういうときどうすればいいか知らない……任せていいか?」 男「……ったく……お前はいつもいきなりだな」 女「…」 男「……一つだけ言っとこう」 女「なんだ?」 男「歯は毎日磨け」 女「……」 プルルルルルル~ ガチャ 男「はいもしもし。」 女「男!やった!ついに私はやりとげたぞっ!!」 男「女か?まずもちつけ。深呼吸してから順を追って話せ。」 女「私は今日、ついに城を完全制覇したんだ!」 男「ゴメン、さっぱり話が見えないんだが・・・。」 女「長い日々だった・・・。これでようやく私にも安らかな夜が訪れる・・・。」 男(・・・話通じてねぇ・・・)「え~っと・・・なんだ?ゲームの話か?」 女「そう・・・苦節数年、ようやく・・・無限城を制覇したんだ!!」 男「無限城・・・戦国無双?」 女「当たり前だろ?あぁ・・・これでようやく猛将伝に取りかかれるよ。」 男「しかも1かよ!!呂布に会うのにどんだけかかってんだオマエ!?」 女「何を言ってる。呂布など、とうの昔に全キャラで倒したぞ。」 男「ちょ!クリアって虚空(999階)の方かよ!?」 女「さすがに全キャラで制覇するのは時間がかかったよ。」 男(絶句) 女「この感動を真っ先に君に伝えたかったんだ。」 男「そ、そうか・・・おめでとう。」(この調子じゃ猛将伝の無限城・改、さらには2やEmpでも・・・) とりあえず戦国無双が自分的にタイムリーだったので書いてみた 男「これはいったい・・・」 女「男根というものだ」 女「ふっ、すばらしい発見をした」 男「今度は何?」 女「トイレに行った後に手を洗うだろ?」 男「まぁそうだな」 女「それは手に付いた雑菌をとる為だ」 男「おぅ、なんか久しぶりに常識的な意見だ」 女「で、重要なのはここだ。用をたした後に汚れたところを拭かなければ手が汚れない!」 男「……拭かないの?」 女「で、早速やってきたわけだが…これはパンツが汚れてるという盲点があった」 男「パンツみせちゃらめぇぇぇぇ」 女「ああ。鑑賞・保存・末代に伝える用に三冊買ってやろう」 男「…お前って金持ちだな」 女「無論親の金だ」 男「まさにダメクール!!」 前 次
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imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (Spider Food.png) ダンバロウの巨大な蜘蛛にとって、蠅もフェアリーもほとんど変わらない。 To the giant spiders of Dunbarrow, there's little difference between fly and faerie. エルドレインの森 【M TG Wiki】 名前
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あるロボットと男の話・SS 単発 最終話 DBへ SS保管庫へ
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藍園愛華プロローグSS ■藍園愛華プロローグSS 「ごきげんよう皆様、今日もいい朝ですね」 丁寧なお辞儀とともに教室へ入る黒髪の少女、藍園愛華。 普段は非常に大人しく、物腰や口調も丁寧。本を読むのが好きな、静かで落ち着いているお嬢様タイプだ。 しかし、それは彼女の一側面にしか過ぎない。 ……時は放課後、周りは部活動をしている生徒が多く、その場で愛華は少々浮いていた。それは、彼女の線が細めでいかにも大人しそうだからというだけではない。 今の彼女は学生帽に、黒いズボン、そして学ランという姿であった為だ。 特筆すべきはそのデザインで、帽子の紋章には「正義」。学ランの背中には大きな文字で「友情」と描かれている。 その姿はまるで一昔前の番長である。生徒会所属なのに。 次いで愛華は荷物の中から大きな組み立て式の旗を取り出し、その場で組み立てる。 旗には「努力」の文字、そして大太鼓(やや小さめである)まで持ち出した。 これらは全て自前で用意されたものであり、ほとんどが手作りの品である。 旗を持ち、太鼓を脇に置き、しっかりとその足で姿勢よく立つと、彼女はその輝く目をかっと見開いて叫ぶ。 「押忍!でございます!皆様の愛!努力!友情!それらの象徴である部活動!本日もこの藍園愛華!全力で応援させていただきます!!」 彼女は大きく旗を振りまわしながらさらに叫ぶ! 「フレーッ!!フレーッ!!希望崎ッ!!」 そう言い終わると彼女は今まで振っていた旗を上空に放る!旗は空中で分離し四本のスティックと一本の大きな旗となる! それらを器用に受け止め、旗部分の持ち手をまるでトウモロコシを咥えるかの如く口で咥える! そのまま四本のスティックで華麗にチアリーダーのバトン演技! 次にその二本を宙に放って、残りの二本を手に持ちながら太鼓へと向き直る! 「さぁんさぁんななびょぉーしッ!!」 旗を口に咥えているせいでややくぐもっているが、十分すぎるほどの声量! ドン!ドン!ドン!手にしていたスティックを放り、落ちてきたスティックを受け止める! ドン!ドン!ドン!手にしていたスティックを放り、落ちてきたスティックを受け止める! ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!くるりと一回転した後再びスティックを放り、落ちてきたスティックを受け止める!その動きによって自然と旗がはためく! ドン!ドン!ドン!手にしていたスティックを放り、落ちてきたスティックを受け止める! ドン!ドン!ドン!手にしていたスティックを放り、落ちてきたスティックを受け止める! ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!スティックを受け止め四本のスティックを使用した華麗なバトン捌き! 頬、いや、体全体を伝う汗!しかしその応援の動きは決して衰えない!何故か!そう、これこそが彼女の魔人能力、愛と正義の熱血大応援団! 彼女の熱い心がこの無茶とも言える応援を可能としているのだ! 「フレーッ!!フレーッ!!希望崎ッ!!」 誤解のないように記しておくが、彼女は応援団やチアリーダー部などに属する者ではない。 この応援は完全に彼女が一人で勝手にやっている事である。 何故こんなことが出来るのか、それは藍園愛華が誰よりも人を応援したいと思っているからに他ならない! 「フレーッ!!フレーッ!!希望崎ッ!!」 その後もしばらくの間続いた応援であったが、やがてドドンッ!と太鼓を打ち鳴らし、愛華は礼をする。 本日の応援プログラムが全て終了したのだ。 「皆様、今日もお疲れ様です!!」 愛華は旗や太鼓を片付けると、キリッとした姿勢のまま校庭を後にする。 「……ふう……わたくしの応援は、誰かの力になっているでしょうか……」 汗をぬぐいながら愛華は再び校庭を見た。今日も自分の大好きな、部活に一生懸命な人たちの姿がそこにあった。
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SS撮影会【アルマンシア】 エンチャントクイーンスパイダーはちょっと無謀だったかもな。。。 一応討伐はしたものの、到着したのは数名・・・ 倒したのはさらに一握りの強者ACでした^^ ってことでせっかくアルマンシアにきたので撮影会を開きました。 もう一枚☆
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裏決勝戦【旧東京駅】SSその2 小さな銀の虫眼鏡。 叔父はそれを駅員に掲げて見せた。太陽光をまぶしく反射する。 東京駅。遠藤終赤は飛び込み自殺を目撃したことがある。6年前、8歳の時分。 飛び散る肉片は血液と区別がつかない。肉片に当たった無関係の人間が怪我をした。遅れて悲鳴が聴こえる。 思わず顔をそむけた終赤を、叔父は『よく観察しなさい』とたしなめた。電車で大破した死体をだ。8歳の少女に向けて、知りもしない他人の死体を観察するように言ったのだ。 死体に近寄る叔父を、駅員が止める。当然である。 叔父は懐から小さな虫眼鏡を取り出し、左手に掲げた。右手ひとさし指から射程1mの推理光線を放射。弱めに出力された桜色の推理光線は、虫眼鏡のレンズを通過する。光は分かれ、足元に桜色の映像を映し出した。 桜の描かれた『家紋』。 その下に神聖な『推理』の二文字。 遠藤の家は由緒正しき、『公家』――『皇族』配下の密偵。家柄固有の虫眼鏡は、その身分を証明する唯一の方法だ。叔父は駅員に通され、死体を検分する。 トングを持った男たちが死体の肉を拾い集めるのを、終赤は離れて観察した。 人肉。人肉。人肉。人肉。人肉。人肉。 東京駅のトングは人の肉をつかむのに慣れている。 東京駅に、トングは人の数だけ存在する。 ◆ 【トング道】――リーチに優れるトングにて相手の袖などを挟むことで動きを支配する護身術。江戸城内のゴミ掃除と警備を担当する御庭番の用いた殺人術を発祥とする。(聖槍院九鈴プロフィール参照) 「可燃。不燃。可燃、不燃可燃可燃不燃可燃不燃不燃可燃不燃可燃可燃可燃」 聖槍院が死体を分別する。 旧東京駅。――関東に関西軍が侵攻した際、東京駅は暴徒の大群に襲われた。新宿、渋谷駅に次ぐ日本最大級の迷宮ダンジョンだった東京駅。もとより多数のゴブリンが徘徊していた。暴徒と混じったそれらは恐るべきゴブリンモヒカンザコ軍団となり、駅を支配。政府は東京駅を捨て、完全封鎖を決行し、旧東京駅と呼ばれるようになる。 軍団は、大会運営によって事前に死体の山に変えられていた。 「『不燃』」 死肉をつかんだトングに、骨が吸着される。聖槍院はそれを投げる。積もれた骨の山にカラン、と落下した。 「ごみはすべて分別する」 大会参加者の中には、聖槍院九鈴の『タフ・グリップ』を、『何でも掴み取る』能力と勘違いしている者がいる。それは間違いだ。『万物をつかむ』は『トング道』の理念であり、能力ではない。 『タフ・グリップ』は『一度トングで掴んだ物を決して離さない』。その認識は、正しい。そして、『タフ・グリップ』にはもう一つ効果がある。 『掴んだ物を分別』する効果だ。 雪中から巨大な氷塊を。湯船から垢を。泥沼から硫化水素を。死体から骨を。すべて『タフ・グリップ』の分別によって吸着させ掴み取ることが可能。これが一見、『何でも掴み取れる』と誤解されがちな効果だった。正しくは、『掴みとった物を何でも分別する』である。 聖槍院はふう、と息をつき、清掃帽を正した。彼女の服装は、駅の清掃員そのものだ。 現れた人物を一瞥すると、素足に挟んだトングで、トン、と逆さにぶら下がる。 死体の山が左右に積まれた狭い通路。まるで『巣』のように、トングでトングを挟みこんだトングの『鉄筋』が幾重にも交差し通路の空間を埋め尽くしていた。 「これは……粋なオブジェですね」 『巣』を見渡した遠藤終赤は、一礼し、名乗りを上げる。 「拙偵、全てのアカを終わらせる。極右探偵・遠藤終赤。……いざ、推して参りますっ!」 「庭番、聖槍院九鈴、と、いいます」 対する掃除婦も両手のトングをカン、と交差させ、口を開く。 「全てのゴミを……片づける」 ◆ (『もう一人』が聖槍院様に接触したか。急がねば) 東京駅丸の内口。 遠藤は一人、無線から状況を確認する。偵察に行かせた『分身』が敵と接触した。本体の自分もそこへと向かう。 「叔父上」 腰差しの虫眼鏡に手を当てる。触れても触感がわかりにくいほどに小さく、薄いが、頑丈だ。これだけが遠藤にとって、『維新の探偵』の証であり、叔父の形見でもある。かつて隠れキリシタンが特殊な鏡で、密かにキリスト像を映し出したように。探偵たちは虫眼鏡と推理光線を組み合わせ、『認証手形』として活用してきた。 「今こそ、革命のときです」 温泉旅館の戦いで得た魔人ヤクザ・夜魔口組の『コネ』。上手く扱えば力になる。さらに、大会で金とWL社の後ろ盾を得る事ができれば、実行できる。 遠藤は『虫眼鏡』を身分証に、仲間の探偵を探し集め、協力を求めるつもりだ。 日本政府を転覆させ、新たな探偵政府を立ち上げるために。 (錦の御旗の元、皇族直属の軍事探偵を組織し、外国の脅威に対抗する……!) 「はじまります。探偵の時代が」 ◆ 壁、天井、壁、トング、壁、天井、トング、壁、天井、トング、トング、トング。 通路に組まれたトングの『鉄筋』は、ジャングルジムのような地形の理を聖槍院に与えた。 「ハッ!」 聖槍院はぐるり、と回転し、トングでレンガ壁の段差を掴む。 縦横無尽、立体的に通路を駆け、遠藤に致命傷を与えんと繰り出されるトング道技。 「『流歯(るんば)』」 ボ、ボ、と音が連続した。聖槍院が死体から『分別』し、収集した『歯』がトング道技術によって恐るべき散弾となり、遠藤に襲いかかる。 「ぐ……ッ」その内の一つが、遠藤の腹を抉った。「……ヤァーーッ!」遠藤の推理光線。狙うは聖槍院ではなく、通路に組まれたトングの鉄筋。まずは聖槍院の足場を崩す。その判断は間違ってはいない。 キンという金属音が響き、トングの鉄筋に推理光線が『弾かれる』。 「…………は?」 「『蟹山伏(かにやまぶし)』」 聖槍院の両手両足4つのトングが大きく開かれ、頭上から遠藤に襲いかかった。 「――――わっ!?」とっさに推理光線をふるい、聖槍院のトングを斬り裂く。転がり、ダン、と壁に叩きつけられた。隣に置かれたゴミ箱が揺れる。 遠藤はカハ、と息を吐き、敵を見た。 (『弾いた』……!? レーザーにも等しい推理光線を!…………刀を弾くように、こちらの指先ごと!?) トングを焼き切れずに通過するなら判る。だが、弾くとは、どういうことか。 (彼女の『論理能力』……! つまり、こういうことだ) わずかな時間の間に、遠藤は推理する。 (『タフ・グリップ』は掴んだ物を絶対に離さない! ……だから、物体を掴んでいる間のトングは絶対に『壊れない』。何故なら、壊れたら、掴んでいた物体を『離してしまう』から。『だから』絶対に壊せない。ここまでが彼女の論理能力の『範疇』……!) まずい!事前の推理が甘かった。計算が狂い、ここまで大きな隙を――…… 「ごめんなさい……」 「は」 「ぜんぶ、私が悪いの」本来なら追い打ちをかけるべきタイミングで、聖槍院は頭を下げた。 「……え」 「私が、東西戦を防げなかったから、たくさんの人が死んだ。東京に攻め入るゴミを、掃除できなかったから」彼女は山になった彼らの死体を見た。 「……はぁ。でも……でもそれは」 「私のせい。東西戦で核が落とされて、国力が疲弊しなければ、ウィルスもあれ程広がらなかった。ウィルスを撒き散らすゴミを、私が掃除していれば。遠藤さんの叔父さんも死ななかったのに」 「叔父……上…………」 「ごめんなさい。本当にごめんなさいごめんなさい」 「そんな……」突然の謝罪に戸惑いながらも、遠藤は自分の考えを述べた。 「拙には、貴女のその、異常な自責が理解出来ません。聖槍院様は……悪くありません。責任ならむしろ我々、探偵にあります」 遠藤はよろり、と近くのゴミ箱で身体を支える。 「東西の緊張が高まっていた事はわかっていました。探偵が、叔父が、関西の企みを看破できなかったのがいけないのです」 「許せない」 聖槍院は涙をこらえているようだった。「こんな自分が、許せません。……でも、そう言って貰えると救われます。ありがとう、探偵さん」 聖槍院は微笑んだ。 清掃帽で隠れてはいるが、美しい顔立ちがひときわ輝いて見える。遠藤は思わずどきりとした。明らかに、雪山の戦いと比べて狂気が和らいでいる。 試合前に調査した聖槍院の素性は、謎が多い。江戸時代から続くトング道。その鍛錬に時間を費やしてきた事は確かだ。大学の在籍はなし。家業を継ぎ、その為だけに生きる事に不満は無かったのか――家柄に縛られた遠藤がそう考えるのもおかしな話かもしれないが、とにかく遠藤は疑問に思った。 「私は……遠藤さんとも、四葉ちゃんみたいに仲良くできたら、と思っています」と聖槍院。 「仲良く……では、戦いが終わったら温泉にでも行きましょうか?」 「本当ですか」聖槍院は口元をほころばせる。「ふふ、探偵と温泉なんて、なにか事件でも起きそう。……楽しみですね」 「ええ……、では、試合再開といきましょう」 遠藤は立ち上がる。その際に、ゴミ箱で支えていた左手を払いのけた。 そのゴミ箱は東西線以来ずっと放置されていたのだろう。中身がいっぱいに詰まっており、形容しがたい腐った紙くずや鉄くずが箱の口からはみ出ている。遠藤が手をのけた反動で、はらり、と紙くずが通路に落ちた。 「クズが」 「は…………?」 「ごみはすべて分別するごみはすべて分別すごみはすべて分別するごみはすべて分別するごみはすべて分別するごみはすべて分別するごごみはすべて分別するごみはすべてごみはすべて分別するごみはすべて分別すごみはすべて分別するごみはすべて分別するごみはすべて分別するごみはすべて分別するごみはすべて分別すごみははすべて分別する」 脈動し、ギョロリと見開かれる、聖槍院の眼。「探偵のテロリストの……クズめ」ぐるり、ぐるりと右眼だけが回転し、遠藤を凝視して停止する。「ごみはすべて、分別する」 「な…………」――――何だこれは、彼女の狂気は、和らぐどころかむしろ―― 「『大剃(だいそん)』」 くるりと彼女の持つトングが回転した。 トングに圧縮された空気が開放され、爆発的な気流を生み出す。 剃るようなカッターが遠藤に襲いかかる。 「あああッ」 カチン、と音がして遠藤の左腰が切り裂かれた。腰の虫眼鏡に当たった音だ。 「イイイヤァーーーッ」 キン、と遠藤の推理光線が弾かれる。空気を掴んだ聖槍院のトングに。 聖槍院は天井を掴んだ左手を軸にそのまま左足を振りぬくと、身体を大振りに回転させ、右足のトングを振り回す。それを下に避けた遠藤の右腕を聖槍院の右手トングが掴み取る。 「しまっ――」――腕を掴まれた。 ぐるん、と遠藤の身体が反転。「がふッ」 地面に叩きつけられる。すぐに身体が浮き上がり、再度叩きつけられる。 何度も、何度も、何度も。 本来、トング道の正式な試合なら、相手を掴んだ時点で一本となる。 掴んでしまえば、あとは殺すだけだからだ。 ◆ 遠藤が通路に飛び出した。 聖槍院に掴まれた方ではない、厚みのある、『本体』だ。1m長の推理光線をきらめかせ、二人の間に走る。 「ヤァァアアアーーーッ!」 ザン、と目の前の『腕』を断ち切った。 聖槍院ではない、掴まれた方、遠藤終赤の『分身』の右腕を断ち切った。 敵の距離と動きを考慮して、あえて『味方の肉』を断ったのだ。 「ンアアアッ!」 遠藤の『分身』が叫ぶ。 二の腕の先から鮮血が吹き出し、聖槍院に噴きかかる。 「イヤァァァアーーーーッ!」下から上へ。かがみこんだ遠藤の本体が、『聖槍院の腕』を断つ。分裂の右腕をトングで掴んだその腕を。 斬られた二人の腕はトングでつながれたまま吹き飛び、ドン、と天井にぶち当たった。 鮮血が天井に塗りつけられる。 「掃除婦はナイル川のほとりで雑巾を横ではなく縦にしぼった」右腕を失くした聖槍院は何ら動じる事がない。血を噴く右腕をトングで掴み、止血した。横目で遠藤を一瞥すると、足で天井をつかみタン、タン、と通路を走り去る。『巣』から退却する気だ。 「ま、待ちなさい……!」本体の遠藤は落ちた腕を拾うと、聖槍院を追う。 腕を斬られた分身はその場でうずくまったまま動かなかった。置いていくしかない。 巣のあった通路よりも少し広い場所に出る。 「……まだ」 立ち止まった掃除婦は柱を背に探偵を睨んだ。「私の庭を荒らす気か?探偵」 「次は拙偵が相手です!」遠藤は右手にひとさし指を構えた。 左手には聖槍院の腕と遠藤の『分身』の腕。二つは黒いトングでつながれたまま。 「解除」 聖槍院が言った。 カツン、と『分身』の腕を掴んでいた黒トングが床面に落ちる。『タフ・グリップ』が解除されたのだ。遠藤はとっさに黒トングを拾い上げた。 同時に、遠藤の背後。 先ほどまでいた通路に、がらがらと硬い石の砕ける音が鳴り響く。 砂煙が遠藤の足もとへ舞い飛んだ。 「な……?」 ――『巣』のあった通路の『天井』が落下し、白い瓦礫で埋めつくされる。通路に残された遠藤の分身が、まだそこにいたはずだ。 (まさか、『巣』に見えた、あの沢山の……) 聖槍院九鈴は、あらかじめ天井を破壊して―― (……沢山のトングで、天井を繋ぎ止めていた!……巣のように配置したトングは、それと悟らせないためのカモフラージュ……!) 「ごめんなさい、本当に……」聖槍院が頭上から声をかける。「解除」聖槍院の右腕の止血が解除され、鮮血がトングを吹き飛ばした。 「――止血を……!?」かろうじてトングを避ける遠藤。だが、吹きかかる血は避けきれず、白い顔が赤く染まる。 その遠藤の袖を、聖槍院の握る銀のトングがグイ、と捕獲。「あっ――」 ドン。と強く床面に叩きつけられる。「か……はッ」 (まずい、掴まれた。これでは生き埋めになった分身と同じ!) 今度は助けてくれる仲間など、いない。 「ごみはッ!こまめにッ!分別するッ!ごみはッ!こまめにッ!分別するッ!ごみはッ!こまめにッ!分別するッ!」繰り返し、チョップするように遠藤を叩きつける。 「……つ、ぐあッ!ぐああッ!ぐあああッ!」 (何かないか。逃れる方法は――……!推理せよ!) 遠藤は推理光線を発しようと、推理を集中させる。 (――推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!推理せよ!)心中に一つの案が浮かび、薄れゆく意識の中、指先に推理光線の光が灯る。(そうか、もしや――) 「しね」 しかし、その光は聖槍院に届くこと無く、遠藤の体はブン、と投げ出された。 体が何度か床面をはね、滑り、転がる。「……ゲホッ!」 遠藤は消えかかる意識を、奥歯に仕込んだ青酸カリで無理矢理に覚醒させた。 目の前には長い下りエスカレーターが、力強く稼働している。 ふら、と立ち上がった遠藤はエスカレーターの天井を分厚くポスト・イット化し、引き剥がす。触れただけで分裂は起きない。引き剥がす必要があるのは、この能力の制約といえる。当然だが、厚みのあるものほど引き剥がすことは困難だ。蛭神鎖剃の巨大陰茎のように、めちゃくちゃに振り回した上で重力がかかる状況でなければ、自然に剥がれることはあり得ない。今回は、少しだけ引き剥がせばそれでよかった、残りの仕事は、それを『貼りつけた』エスカレーターが『してくれる』。 (どんな能力にも、『穴』はある) エスカレーターを高速で駆け降りながら、遠藤は考える。背後では、ベリベリと音が鳴り響く。エスカレーターが彼女を追うように自動で天井を引き剥がし、追手の邪魔となる壁を作り出す。 (何故、聖槍院様は自分を『離した』? ……あのまま自分を叩きつければ、彼女は勝てたかもしれない) 聖槍院は追ってこない。瓦礫に埋まった分身の始末をしているものと思われる。 (……例えば、強力な熱線でトングを焼き斬り、切れた両端を熱でつなげてしまえば、それは『小さなトング』となる。推理光線でそれほどの出力を出せるかわからないが、それがトングの『無敵』を破る手立てとなるかもしれない。破壊されても『トングのまま』なら、『タフ・グリップ』の能力原理に『沿う』からだ) よろめき、通路に吐血した。 (それ以外の『穴』が……『あるとしたら』? 聖槍院様は拙を離したのではなく、『離さざるを得なかった』のだとしたら……それが『タフ・グリップ』を破る手段となるかもしれない……!) ◆ 聖槍院は瓦礫から、ゴブリンどもの死体と遠藤終赤の分身の体を『分別』した。 それら死体に死体から収集した『脂分』を振りかける。 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」それは、彼女にとって聖水に等しいものだった。 次に、同じく死体から収集した『リン』の詰まったトングを投げ、密閉を解除。 ポン、と音がして死体が激しく燃え上がり、遠藤の息の根を完全に止めた。 これで儀式は終わった。汚れたこの世の、全てを燃やし尽くす事は簡単だが、彼女はそれをしない。彼女はただ、こまめに分別し、焼却する。 聖槍院は振り返り、逃げた遠藤の本体を追った。 血が点々と跡を残している。 (でも、彼女の能力なら、この程度簡単に『偽装』できるはず)聖槍院は思う。 通路の分かれ道。迷路のような東京駅も、案内板を見ればそれ程迷うことはない。 (血痕の向かう先は、八重洲北口……) そのまま行けば当然場外となる。遠藤はあえてそこへ向かったらしい。……血痕が偽装でさえなければだが。 八重洲北口には、有名な『遠山の金』の石碑がある。 (東京駅に来た記念に一度、拝むつもりだろうか。江戸幕府の奉行人……いえ、確かに探偵には近いが、幕府の役人なら、むしろ『彼女の敵』……それは無い、か) 非クリーンな雑念。無駄な思考をしてしまった。と反省。 「……スゥーーー……ハァーーー……」 父に習ったトングの呼吸。聖槍院は心を掃除する。 彼女の最大の武器は、冷徹で理知的な思考にこそある。 「ヤァーーッ!」 トングを繰り出し、天井にぶら下がった駅の案内板を掴む。 掴まれた案内板の板が、ベリ、と剥がされた。 迷路のように入り組んだ東京駅。……遠藤終赤は、『案内板』を偽装していた。 (……向かう先は…………) ◆ 大正時代の風格を感じさせる赤レンガ造り。旧東京駅は、戦争後も外見はそのままの形で残り、東京に立ち並ぶ摩天楼と共存している。東京駅の目の前に皇居が広がり、その隣には東京駅によく似たレトロモダンの法務省旧庁舎。 東京駅、屋根の中心部に遠藤はいた。 屋根と同じ色の青い痣がところどころに彼女の身体に染みている。 「必ずや……この街を探偵で埋め尽くしてみせる」 遠藤の分身が消滅するまで、あと30分はかかる。それまで、彼女はもう一度分身を作り出すことはできない。推理する時間も含めて、時間が必要だ。 遠藤は推理した。聖槍院の能力、素性、どれも判らぬ点が多すぎる。彼女の目的は、『東西戦の瓦礫の撤去』だ。彼女は日本全土を自分の『箱庭』と考えているらしい。確かにトング道の発祥は、江戸城内の庭番であると聞いている。彼女がそこまで掃除に固執する理由は、先祖の職務がゆえのものだろうか そして、彼女が遠藤を掴んだにもかかわらず、『離してしまった』理由も、未だ不明。 「わからない……」 その時、ガン、と屋根が撥ねた。 「…………投石!」聖槍院が駅内から、礫を投函しているのだ。 絶対壊れないトングの棒と、トングの圧力。その二つを利用した『てこの力』で、驚異的な投石力を発揮。不吉な物音を立てて、青い屋根が次々と破壊されていく。 位置までは完全に把握されていない。 東京駅は南北に伸びた形をしており、その両端にドーム型の屋根がある。 遠藤は北側ドームの近くまで走り寄った。ドームの上部には避雷針が天を指している。 ガタン、と先程までとは毛色の違う音が屋根に響く。 「遠藤終赤……」 聖槍院九鈴が姿を現した。「貴女を掃除する」 「聖槍院様」 カラン、という音がした。 ドームの避雷針に、遠藤終赤がそれを投げ、引っ掛けたのだ。 聖槍院から奪い取った漆黒のトング――『カラス』を。 聖槍院はそれを見た。あの時、断ち切られた右腕と共に奪われた彼女の家宝。 二人の間には、遠藤があらかじめポスト・イット化し、内部の厚みを薄くした屋根の落とし穴がある。遠藤が黒トングを避雷針にひっかけたのは、この場所に敵を誘導するためだ。 「卑怯な手で申し訳ありません」遠藤が言った。「これは、拙が能力でコピーしたものかもしれないし、本物かもしれない。……貴女にとってこのトングが大切な物なら――」 「トング道は」 探偵の言葉を遮り、カンと、聖槍院は片足で立った。 「庭番の技術。本来、道具は選ばない」 「庭番……。庭番なら、なおさら道具に拘るべきでは……ないのですか」 聖槍院はトングを握った右足を持ち上げ、目の前で左手のトングと交差させる。 「私に選択肢など無い。私が全て悪い。本当に、ごめんなさい。…………しね」 「一体、貴女は、どうしてそこまで……」懺悔するのか。 彼女の『謝罪』が『狂気』と共に発生した妄想なら、その二つはセットでなければならない。罪悪感の苦しみから逃れるために、狂気はあるからだ。 だが、彼女は『理性的』な時にも遠藤に『謝罪』した。 ……本当に、その罪悪感は、妄想でしかないのだろうか? 「『竹箒』」 聖槍院が動いた。ぐるりと身体を回転させ、ブレイクダンスのように三つのトングを交互に繰り出す。まるで竹箒、まさしく庭番の技術。 「……イヤァーッ!イヤァーッ!イヤァーッ!」遠藤は推理光線でそれを弾く。 やはり断ち切れない。聖槍院は空気を掴むことで、トングを無敵化させている。 (トング道は幕府の『御庭番』……昔の話だと思っていた。あまりにも『掃除婦すぎる』彼女の容姿に、気を取られていたが)遠藤は推理する。 「ハッ!」バク転で間合いをとった。 (『御庭番』は……『隠語』だ! その意味は徳川幕府の『隠密』――我々の、敵……!) 「解除」 聖槍院が言った。 ドームを含む、周囲の屋根が瞬く間に崩壊する。 聖槍院はあらかじめ、ドームの屋根を破壊して、トングで固定していた。誘い込まれたのは遠藤の方だ。二人の足場が深く沈む。 「聖槍院、九鈴……貴方は!」遠藤は叫び、自分で作った落とし穴へ跳ぶ。落下時、瓦礫に衝突するリスクを少しでも抑えるために。 (もし……、我々と同じように、彼女の家業も、維新後も連綿と受け継がれてきたならば……!密かにテロや破壊活動に眼を光らせる。幕府の御庭番としての、現在の職名は……。公安警察の偽原光義とは、別。日本政府の、法務省の外局――――公安調査庁の――――) 遠藤は口を開く。 「『魔人……諜報員』――――ッ!!」 「……全て、私が悪い」 落下寸前、遠藤は聖槍院の言葉を聞いた。 遠藤は合点がいった。彼女の異常な自責に。 事実だったのだ、妄想などでは、無かった。『諜報員でありながら』、彼女は本当に『掃除できなかった』のだ。戦争を起こした者共を、核兵器を投入した連中を、ウィルスをまき散らした魔人を。 ゴウ、と風を切る音が耳を塞ぐ。遠藤は重力にあらがえず落ちてゆく。 ドームの内部は吹き抜けとなっており、二階部分のテラスが円状に広間を取り囲んでいる。 「――ああッ!」 瓦礫とともに遠藤はテラスに落下。 聖槍院は落ちてこない。遠藤は起き上がる。 「……『スマート・ポスト・イット』!」考える間も無く、テラスの周壁に手を当てた。 ベリ、とその壁が引き剥がれる。 その壁、8m先の頭上には聖槍院九鈴。 聖槍院は崩れ落ちた屋根の淵を掴み、今まさに遠藤に追撃せんとしていた。 ポスト・イットの『切れ目』に設定されたのは、トングで掴まれた淵の部分。 ベリベリと、聖槍院自身の体重が、 ポスト・イット化された壁を引き剥がし、聖槍院の追撃を阻んだ。 「片す」 聖槍院はためらいなく 引き剥がれる壁からトングを離した。 「全てのゴミを……片す!」 身体を逆さに、重力に身を任せる。 「ハァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――ッ!!」 正気も家宝も防御でさえも、聖槍院は全てを捨ててトングを構える。 目下、遠藤の頭をかち割るために。 遠藤は右腕に推理光線を構えた。 「イヤ……ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――ッ!!」 上段から振り下ろされたトングが推理光線を弾く。 推理光線に無敵のトングは破れない。 そのトングを、遠藤の『もう一つの』右腕がすり抜ける。 パリン、と音がした。 桜色の光。 遠藤の二の腕から先は、まるでトングの様に左右に分裂していた。聖槍院の懐に潜り込んだもう一つの腕。その指先から推理光線が発射されている。 それが、聖槍院の心臓を貫いた。 げほ、と吐血した聖槍院の身体から力が抜け、 遠藤の身体に覆いかぶさる。 「がっ……は……。あの、時……」遠藤は勝利を確認し、聖槍院の亡骸に、言った。 「あの時、拾った。斬り落とした『分身の腕』。分身の右腕だけを、拙の腕と『一体化』しました。だから――」 遠藤は左右に分裂した右腕を、ピタリと合わせた。 腕の別れはじめの部分には、切断時の傷跡のようなものが見える。 「……だから『右腕だけ』は『分裂できる』」 遠藤は死んだ彼女の握るトングを見た。 「結局、焼ききって再度繋げられるほどの推理光線は、今の自分には出せませんでした。これだけが今回、貴女の能力に対抗する唯一の手段、腕を『トング』のように分裂させる事……」 遠藤はクラリ、と倒れそうになるのをこらえる。 「推理光線は『知能』に依存する。そしてポスト・イット化能力は、分裂し体力が減っても『知能』だけは『変わらない』。だから二つに別れても光線の威力は『変わらない』」 探偵帽を正し、聖槍院の身体を引き離す。 「だからこそ『スマート(知的な)・ポスト・イット』というのです」 ◆ 結局……聖槍院が本当に『諜報員』かどうかは、判らぬまま。 だが、そう考えると納得がいく。 この大会には危険人物が多すぎた。チャイニーズ・マフィアのボス。世界の支配を図る少女。世界の破滅を望む元魔人公安。指定魔人暴力団ヤクザ。日本政府転覆を企てる探偵。国家の存亡に関わる危機に、日本政府がただ指をくわえて見ているだけだとは、『考えられない』。発狂しながらも凍るような理性を保ち、法律の枠から外れた彼女こそ、潜り込ませるスパイとして最適だったのではないか。遠藤はそう推測した。 どさり、と聖槍院の身体が仰向けに転がった。 遠藤は懐からペラペラになった黒いトングを取り出す。本物の、聖槍院のトング。 (聖槍院様は……) 彼女の胸元に置こうとし、動きを止める。 (……特急列車の戦いで、懐に隠したトングで致命傷を防いだ。今さっきも、推理光線が胸を貫いた時、『おかしな音』がした……でも、トングの音とは、違う) 「まさか」遠藤は聖槍院の胸元を開く……血にまみれたシャツ。その中に。 「やられた」 ガク、と膝をついた。「拙の、自分の……『負け』だ!」 遠藤は羽織の下、腰まわりを確認する。在るはずのものが、『無い』。 「あの時、トングで掴んだ拙を投げ離した時……!あの時、貴女は、『離してしまった』わけでは無かった……、逆に、『掴んでいた』のですね……」 聖槍院の胸の内に仕込まれていたもの。遠藤終赤の幼さの象徴。形見として、肌身離さずそれを持ち歩いていた遠藤の、完全な落ち度。高出力の推理光線によって、粉々に破壊された。これを失った遠藤はもう、『ただの探偵』でしかない。 「『タフ・グリップ』の『分別』で……!あの時、聖槍院様は、トングで掴んだ拙の『身体全体』から『分別』し、抜き取っていた……!『維新の探偵』その『証』――――」 遠藤は、その銀色に光る形見を手にした。 透明のレンズは白く砕け、もう二度と、真実を映し出すことは無い。 「――――――『虫眼鏡』を……!」 遠藤は、聖槍院がその職務を完全に遂行したことを悟る。 これで、テロを決行するための、『仲間との繋がり』が、『全ての計画』が『瓦解』した。これまでの戦いの意味、全てが、泡と化したのだ。 「みご、と……ッ!」遠藤は唇を強く噛み締め、顔を上げた。 「御見事です。聖槍院……九鈴……様ッ!」 聖槍院の家宝。漆黒のトングを彼女の胸元に置き、遠藤は憑き物が落ちたように、急激な眠気に襲われる。力尽きた探偵は、その場に倒れこんだ。 漆黒のトングが、こびりついた血液の燐光で、赤く煌めく。 庭番の掃除婦は見事、 ……ゴミの分別に成功した。 ◆裏トーナメント決勝戦◆旧東京駅の戦い◆終 このページのトップに戻る|トップページに戻る
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登録日:2018/12/26 Wed 12 12 50 更新日:2023/12/26 Tue 23 04 11NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 主人公より先に立った項目 女郎蜘蛛 妖怪 妖怪ウォッチ 妖怪ウォッチ シャドウサイド 妖怪ウォッチ4 姫乃アヤメ 沼倉愛美 花魁 蜘蛛 面食い ※本項は「妖怪ウォッチ シャドウサイド」本編の重要なネタバレとなっております。閲覧には要注意。 美しい男は何もしなくていい。その美味しい魂だけ、食べさせておくれ... CV 沼倉愛美 概要 30話より初登場。姫乃アヤメが時折見せるもう一つの人格の正体であり、彼女の肉体を無意識化で奪い操っていた。また、酒吞ハルヤ達が探していた鬼族の姫である。.....と思いきや、姫とは全くの無関係。その正体は遥か昔に大暴れしていた大妖怪であり、若く美しい男(要するにイケメン)の魂を喰らっていた。ある日、自分好みのイケメンと出会い、一目ぼれし、いつものように喰らおうとするもその正体は霊媒師であり、彼によって封印された。しかし.... 容姿 端的に言うならば「蜘蛛と花魁を合わせた」ようなもの。絢爛な着物をはだけさせた姿をしているが、その口は大きく裂けて鋭い牙を生やしており、顔には桃色の6つの目が付いている。また、頭部につけた櫛の下から蜘蛛の足を彷彿とさせる金の長い装飾が伸びている。 その背中からは8本の黒く太い蜘蛛の足が伸びており、戦闘時の強力な武器となる。 戦闘能力 背中の足から伸ばす糸が武器。蛇のような形にして鞭の如く相手に叩きつけたり、巻き付けてその魂を吸収する。魂を吸い込むたびにその体は際限なく巨大化する。そんな糸の強度は尋常ではなく、不動明王・天のフドウ雷鳴剣や洞潔のアシュラ豪炎丸などの妖聖剣やハルヤの絶大な妖力をもってしても破壊できない。また、 本体そのものも非常に強固なバリアーに守られており、ジバニャンの百猫烈弾も完全に無力化してしまう程。 但し、ダメージを受けて妖力を失っていく度に体が縮小し、弱体化してしまう。勿論それに比例して糸やバリアーの強度も下がってしまう。 劇中での活躍 経緯や原因は不明ながら封印から目覚めると上記の通りアヤメに憑依し、自分を「姫」と勘違いしたハルヤ達と接触し、その勘違いをいいことに彼らを利用。完全に力を取り戻すのに必要な「伝説の男」(*1)を探させていた。その傍ら自身はアヤメの無意識下でイケメンの魂を食らい続け妖力を蓄えていた。 そしてハルヤ達がその男の亡骸を見つけると彼らの目のまでそこに残っていた妖力を吸収し、本来の姿を見せると同時に全てが嘘偽りであることを告げてハルヤの心を折り、更には彼と洞潔から妖力を奪い取いその身を捕らえる。(因みにアヤメの体は放棄した) しかしそれだけに飽き足らず駆け付けた妖怪探偵団とも魂を吸うべく激突するも彼らの抵抗をことごく無力化し、撤退へと追い込む。しかしただでは逃がしておらずアヤメの体に呪いをかけ、元町タワーを自身の糸で覆って占拠し、内部の人々を無差別に襲った。 32話では自身の糸に対抗すべく「ゲンブ法典斧」を手に入れた探偵団と再度激突。彼らの奇策にはやや翻弄されるもその圧倒的なパワーで猛威を振るい、不動明王・天から妖力を奪い取るが、そのせいで「不動明王ボーイ」が誕生。体の小さいがその分すばしっこい相手に巨体を持つ彼女では幾分相性が悪く、これまでとは逆に圧倒され大幅に弱体化。相手がエネルギー切れを起こして眠ったことでどうにか止めは刺されずに済んだ....と思われたが、拘束から解放されたハルヤが現れ、本来の姿である酒呑童子に変身。彼の怒りの攻撃で7本もの足を折られた上に体も手のひらサイズにまで縮んでしまう。危うく止めを刺されかけるが、さすがに状況を不利と判断し、撤退。リベンジを誓った。 ...のだが、突如現れたミッチーのミッチービームを喰らい石化。そのまま叩き落されて木端微塵になるという呆気なさすぎる最期を迎えた。 彼女の死によりアヤメは呪いから解放されたのだった。 ゲーム『妖怪ウォッチ4』での活躍 アヤメに取り憑き、ハルヤを利用したのは原典通り。 「伝説の男」に関する下りがなくなり、ハルヤには餌となるイケメンを集めさせており、 夜の体育館で密会している場面をアヤメを案じて追ってきた妖怪探偵団に目撃され、アヤメの体を完全に乗っ取り正体を現す。 イケメン達は生け捕りにされており、戦闘中には生気を吸収することでパワーアップや振り回して攻撃に利用されている。 妖怪ウォッチの吸引機能を使うことで救出でき、助けると礼を言って逃げ出す、イケメンオーラでプレイヤー陣営を強化する・強烈なアッパーカットを女郎蜘蛛に放ち気絶させるなどの行動を行う。 倒されたことでアヤメの体は解放されるが、その魂はすでに消滅しており…… 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] この頃のシャドウサイドは割と面白かった。ハルヤが女郎蜘蛛と戦う理由がただの逆ギレでしかないし、後々洞潔からも「なんで姫と違うって気づかなかったんだ」って言われてたけど。 -- 名無しさん (2021-04-07 11 29 29) 名前 コメント
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